おんまはみんなパッパカ走る

思い起こしばなし

灰皿

 

「灰皿」

 

それは文字通り、灰を入れる皿だ。

そして、その入れる灰はタバコの灰一択である。

(昔はマッチの「燃えさし」も入れていたが。)

 

思えば、すっかり灰皿を見なくなった。

昔は何処の家にでも100パーセント置いてあった。

 

俺の昔の上司などは、ヘビースモーカーで

お客の家に訪問しても、タバコを吸っても良いか

客に全く尋ねないまま、勝手にタバコに火を付けて

一息、タバコの煙を吐いた後に、お客の部屋の中を

キョロキョロと見回して

「あれっ?灰皿は、どこですか?」

・・・と、聞いたものだ。

 

つまり、それが失礼だと思えないくらいに

人がタバコを吸う事は、自然で当たり前の時代だった。

 

何処に行こうが、灰皿はテーブルの上に置いてあるのが

当たり前で、それが常識な時代だったのだ。

 

思えば、「タバコ」と「灰皿」は

かつての時代の、文化であった。

 

 

世の中には色々な灰皿があった。

 

灰皿は、雑貨、ギフト、アイデア商品、

企業のノベルティ粗品の、王様的存在でもあった。

タバコのマルボロやラークの缶灰皿も大人気だった。

 

高級な灰皿もあった。

バカラのクリスタル、大理石、金、青銅製の灰皿。

社長室や役員室、応接室で良くみかけた。

 

焼物教室に行くと、花瓶・湯飲み・茶碗と同じ位

灰皿を造るのが人気だった。

 

灰皿は、もし見当たらなければ代用すれば良い。

 

空き缶は元より、空き瓶、コップ、食器、

花瓶、人の手。

色々なものが、何でも灰皿になった。

(店屋物の返却する器を灰皿にするヤツは最低だった。)

 

 

でも普通は、何処にでも灰皿はあった。

 

家には絶対に灰皿があったので

サスペンスドラマでは、10人に1人くらいは

重いガラスとかの灰皿で、殴られて殺された。

 

はっきり言って、屋内の殺人事件での凶器では

拳銃よりも灰皿が多かっただろう。(あくまでドラマ内では)

 

昔の家にもあった。

 

時代劇とか観ると、店の主人や番頭が

煙草入れと灰皿がセットになった木製の

手摺り付のヤツで、キセルをくゆらせながら

灰をトントンしていた。

 

もちろん、家以外にもあった。

 

電車 バス 飛行機

映画館、トイレの中、病院の待合室。

 

電車の中では、前の座席の後ろとか窓の下。

新幹線だと手摺りの中に。

 

小学校の職員室は、中に入ると机は灰皿だらけで

タバコ煙で臭かった。

 

小学校の先生の中には教室でタバコを吸うのもいた。

生徒が先生の灰皿を綺麗に掃除する

「灰皿係」をやらされていた。

 

町中華や場末の居酒屋などでは

脇に灰皿を置き、タバコを吸いながら

料理を作る、店員(店主かも)がいたりした。

 

飲食店等へバイトに行くと、新人の仕事は

トイレ掃除に皿洗い、そして灰皿管理だった。

 

それ位、灰皿は一般的だった。

 

自動車には、頼みもしないのに絶対に標準で

灰皿が付いていた。

(今は、基本的にオプション品の場合が多い)

 

灰皿だけではなく、専用のライター

シガーライター)まで絶対に付いていた。

 

そう思うと、昔の車はまさに喫煙者の為に

あると言ってよかった。

 

ただ、よくよく思い起こすと、昔は道路も

駅のホームも、ほぼ灰皿状態だったので

国全体が、「灰皿」と言ってよかったかも。(偏見)

 

偉大なる灰皿国、ニッポンバンザイ!