おんまはみんなパッパカ走る

思い起こしばなし

100キロの友よ

 

お互いに引越してしまい、縁遠くなり

連絡も取れなくなったが、俺が高校生の頃

100キロ超えの、巨漢の親友がいた。

 

彼とは、中学3年の時にも同じクラスだったのだが

その頃は、ただのクラスメイトで、学校内での

遊び仲間の一人って程度だった。

 

高校も同じになり、たまたま家が近くだったので

朝、一緒に通学するようになり、高校では一回も

同じクラスにならなかったが、放課後も二人で良く

遊ぶようになり、同じ所で一緒にバイトをしたりして

どんどんと仲良くなった。

 

その頃の俺は、今とは違い痩せていたせいもあり

100キロ超えの親友は、他の友達とは違う経験が出来て

今思えば、なかなかに面白く楽しかった。

 

高校と言えば、入学してすぐに部活の勧誘がある。

入学後、彼と一緒に校内を歩いていると、痩せっぽちで

身長もさして高くない俺は、ほぼ無視されているのに

巨漢の彼は、勧誘の先輩達から引っ張りだこだった。

 

柔道部、ラグビー部、アメフト部、剣道部あたりが

結構、日参で彼の元にやって来た。

 

彼は巨漢とは言え、ただのデブで、大して体力も無かったので

結局は俺と同じく、帰宅部になった。

 

彼は結構明るく陽気だったので、クラスでも人気者で

学校でも、バイクの話やギターの話とかばかりしていて

学校での「友達グループ」は、俺とは別のグループだったが

実はかなりの「オタク」で、当時「アニソン界のプリンセス」

と呼ばれていた、歌手で声優の堀江美都子の大ファンで

本当はアニメとかSFとか、角川映画が大好きなヤツだった。

 

しかし何故か本来の「超オタク姿」は、学校では殆ど見せず

遊んでいる時の俺にしか、見せなかった。

 

俺の立ち位置が、いまだに少しオタク側にあるのは

半分くらいは、彼の影響である。

 

 

ここからは100キロ超え友達あるある(?)エピソード。

 

高校生なので地元遊びでの移動は、ほぼ自転車だった。

そもそも彼は太っているので、歩くのがあまり好きではない。

 

彼の自転車は、あり得ないくらいに、しょっちゅうパンクした。

俺は彼に付き合って、何回一緒に自転車屋に行った事か。

 

彼は、やはり良く食べるヤツだった。

 

一緒に遊んでいると、しょっちゅう何かを食べる機会があった。

 

おかげで高校入学時に、痩せっぽちだった俺は、卒業時には

結構・・・・。(涙)

 

高校生なので少し遠出する場合は、電車かバスだ。

 

当時は、電車でも対面座席が結構あって、混んでいると当然

彼と並んで座るの事になるのだが、隣に座ると狭くて熱くて

しかも腕とかが触れると、汗かきなのでベタベタする。

 

で、バスの時だが、一人掛けの椅子と二人掛けの椅子があると

彼は決まって、二人掛けに座りたがる。

 

・・・と言っても、別に二人は変な仲ではない。

 

彼には、一人掛けの椅子でも少し狭いらしく、

俺が痩せっぽちだったので、二人で一緒に二人掛けに座ると

丁度具合が良いな・・・と思っていたのだ。

 

でも、俺は熱いのだが・・・・。

 

彼とは良くゲーセンに行っていた。

 

今の子供なら、家で一緒にゲームをするのだろうが

当時はファミコンさえ、発売される前だった。

 

当時のゲームセンターでの主流は、テーブルゲームだ。

 

インベーダーゲームとかで、良くあったヤツで

テーブルの中心に、ブラウン管が埋め込んであって

向かい合わせに座り、膝の辺りにあるレバーとボタンを

操作してプレーし、代わりばんこにスコアを競う。

 

彼は、ゲームをする為にテーブルゲームに座ると

100パーセント、ズボンのポケットに入っている

財布だの鍵を、テーブルの上に置いていた。

 

多分、太っているので、座るとズボンがパツンパツンで

ポケットのモノが、キツくて痛かったり不快だったり

していたのだろう。

 

俺はテーブルの上に物を置くと、100パーセント

置き忘れてしまう性格だったので、それが気になって

イライラして仕方が無かった。

 

高一の頃は、よく学校の授業をサボって

二人でゲーセンで遊んでいた。

 

ある時、胸に名札を付けた3人のオッサンに話しかけられた。

「君たち、何歳や?」

 

補導員だった。

 

俺は、咄嗟に素早く逃げだした。

 

しかし、ふと横を見ると彼はいない。

 

振り返ると、いまだにテーブルゲームに座っていて

3人の補導員に囲まれていた。

 

彼は巨漢で、逃げても目立って見つかりやすいし

そもそもが走るのも、動きも遅いのを自覚していて

最初から逃げる気が、失せていたのだ。

 

俺は、まさか親友を置いて逃げる訳にもいかず

そのまま引き返して、大人しく補導され

後日、担任と親にこっぴどく叱られた。

 

彼とは、よく一緒に映画を見に行った。

 

当時の映画館は、指定席ではなく、早いもの順で

自由に空いている席に座っても良いという方式だ。

 

彼と映画に行くときは、絶対に一番前の一列目に座った。

 

彼には、前に他の座席があると、足がつっかえて

狭過ぎるらしく、これ以上前の無い一列目が

最適だったのだ。

 

じゃあ、真ん中の通路の所の席でも良いのでは?

・・・と思うだろうが、その席は比較的人気があり

だいたいは混んでいる。

 

一列目は映画館で一番人気が無く、映画によっては

ほぼ人が座っていない。

 

彼は横に人が座っているのも、出来るだけ避けたかったのだ。

 

俺も勿論、彼に付き合って、いつも一列目に座っていたが

画面が近すぎて眼が疲れるし、ずっと上方を見続けている感じで

マジで首か痛くなった。

 

あと、邦画やアニメは良いのだが、洋画で字幕だったりすると

当時の字幕は、殆どが右端に出ていたので、いちいち首を

一番右に向けなくてはならず、首を上へ右へ、もっと疲れはてた。

 


この間、映画館が混んでいて、一列目では無いのだが

久しぶりに、かなり前方の席で映画を見る事があって

ついつい彼の事を思い出した。

 

彼は今でも巨漢なのだろうか?

 

もう結構、いい年齢なのだが(まあ、俺と同じ歳だが)

健康に、元気でいるのだろうか?

 

あぁ、暫くぶりに会ってみたいものだ。