おんまはみんなパッパカ走る

思い起こしばなし

ムツゴロウ

時々、ビックリするような人がいる。

 

ワンコが好きすぎて、かつての動物王国の「ムツゴロウさん」

みたいなタイプの人だ。


俺が、ある年の成人式当日に、ウチのワンコ(トイプー)を

散歩させていたところ、前方に成人式を終えた風の

10人以上の男女混合の若者集団が、たむろしてお喋りをしていた。

 

通り抜け難いなぁ・・・と思いつつ、引き返すのも嫌なので

そのまま近づいて行くと、ウチのワンコに気づいた女の子達が

 

「ねぇ、見て見て」、「きゃ~」、「カワイイ~」

などと、キャーキャー言ってきた。

 

・・・余談だが、このくらいの年代の女の子には

「○○好き」と見られたい女・・・っていうのが

けっこうな割合で存在する。(オヤジの偏見)


「子供好き」・「ワンコ好き」・「ニャンコ好き」・・・

という風に自分を「○○好きな女性」という印象を

男どもに与えたくて、子供やワンコを見かけるとすぐに

「子供やワンコが好きです。」アピール・・・をする。

(仮に好きなのだとしても、多分、ワーワーキャーキャーと

大声で騒ぐ程ではないだろうに)

 

この行動は実は男どもに、

「子供好きな、母性溢れる女性」だとか

「動物好きな、心の優しい女性」だというのを

男性にアピールしている訳だ。(余談終了)


・・・と言う訳で、男女混合集団の横を、

ワンコを散歩させながら歩くと、女性陣がワンコを見て騒ぐのは

ワンコオーナーとしては「ワンコあるある」で別に珍しくもないので

俺は、少し愛想笑いしながら、集団の横を通り過ぎようとした。


すると、一人の晴れ着姿の女の子が、ウチのワンコに

タタタッ・・・と、駆け寄って来た。。。

 

ウチの子は(人間大好きっ子)なので、このまま放っておくと

相手に抱きつき、顔をペロペロと舐め回しかねない。

 

俺はリードを強く引っ張って、ワンコを制しながら

(なんと迷惑な、ド派手アピール女だなぁ・・・)

などと思っていると、女の子は更にワンコに近づき

ガッシリ!・・・と、抱きしめた。。。。

 

(げっ! コイツ、ほんまモンやっ!!)

 

しかし、相手は成人式の綺麗な晴れ着姿。

汚したり、爪を立てて糸がほつれたりしたら、かなわん!

女の子の晴れ着が、購入したのかレンタルなのかは知らんが

あとから親が現れて、弁償だとか言われたら、メンドイ!

 

俺は離れろと、ワンコのリードを強く引っ張るが

彼女は、まったく離さず

「きゃ~~、もうっ!カワイイ~~!!」

それを見ていた連れの若者達も、かなりヒキ気味。

 

俺は確信した。

 

彼女は「アピール女」などではなく、「ムツゴロウ」だ。

「ムツゴロウ」は、ワンコ生活をしていると、時々見かける。

俺などは、及びもつかない程の「ワンコ好き」。。。

何事よりも優先して、ワンコとのスキンシップを求める。

怖い事に、それが仮に赤の他人のワンコであってもだ。

 

 

昔の話だが、俺はラブラドールレトリバーを飼っていた。

以前、「食欲」の題名で書いたブログに出て来た

「食欲あり過ぎワンコ」とは、この子の事だ。

大型犬は、毎日の散歩が必須だ。

その日は雨が降っていたが、俺はワンコを散歩させていた。

 

すると、そこにも

強烈な「ムツゴロウ」が、現れたのだ。

 

その日は雨中で散歩をしていたが、結構ひどい土砂降りで

俺のレインコートは、既にずぶ濡れ。

地面に近いワンコは、俺よりもっと「ずぶ濡れ&泥だらけ」だった。

 

散歩の途中に、屋根付きの大きめのバス停があり

雨脚も強くなって来たので、とりあえず俺はしばらくそこで

雨宿り休憩をする事にした。

 

当然、バス停なので、バス待ちのお客さんが列をなしていた。

だが、奴(ムツゴロウ)は、その中にいたのだ。。。。

 

30才前後と思われる、長身のキャリアウーマン風女性。

パンツスーツにハイヒール、冬場だったので高価そうな

ロングコートを着ていた。

 

女は、俺とワンコを見かけると、即座に声をかけてきた。

 

「きゃ~!ラブラドール・レトリバーですね~!

触ってもいいですか~?」

「はぁ、それは別にいいですけど、雨でドロドロですよ?」

「構いません!きゃー!」

 

俺は、ワンコの頭でも撫でるのかな?・・・と思いきや

彼女はワンコに、思いっきりハグ!!


おい、おい。。。

「あの、すいません!!ドロが付きますので。。。」

「あー、いいです、いいです。」

 

ワンコは遠慮なく、ドロだらけの前脚で彼女のコートを

ワシャワシャ。。。。

ビチャビチャの顔と口で、彼女の顔をペロペロ。

女は、もう顔にまでドロが付いていたのだが

全く嫌がる素振りも見せず、ワンコに抱きついている。

 

並んでいた、他のバス待ちの人達も

唖然とした顔で、こちらを見ている。

ここまでくると、もう狂気とすら思える。

(おいおい、今からバスに乗るんじゃないのか?

飼主の俺ですら、ドロドロのワンコにハグしたくないぞ。)

 

「どうもありがとう♪」

女は礼を言って、ドロドロになったコートだけ脱いで

それを手に抱え、バスに乗り込んで行った。

見ると、バスの中から、ワンコに向かって手すら振っている。

ウチのワンコは、早く散歩に復帰したくてウズウズしていて

バスの中の女なんか、全く見てもいないのに・・・。


俺は「ムツゴロウ」に会うたびに思う。

俺が、自分自身で「ワンコ好き」と思っているのは間違いで

実は、世間的には大した「ワンコ好き」では無いのだろうか?

 

俺には将来に渡って、あのレベルに到達する自信が無い。