おんまはみんなパッパカ走る

思い起こしばなし

あの人は今・・・。

「あの人は今・・・。」

・・・と言っても、別に有名人の話ではない。

 

この歳になると、昔に知り合いだった、そこそこ年上の人が

「今も元気なのかなぁ・・・」とか

「ご存命なのかなぁ・・・」とか

・・・が、気になったりする。(俺だけ??)

 

 

俺の年代だと、親世代の方達の訃報がだんだんと多くなる。

叔父や叔母の年代の親戚の方々の、訃報が毎年のように届く。

 

今の世代と違い、俺の親世代は兄弟姉妹がとにかく多い。

 

ちなみに、父は8人兄弟、母は7人兄弟だった。

 

当然、その配偶者の方もおり、中には更に

そのご兄弟とも、お付き合い頂いている場合もあるので

その人数は、かなりの数になる。

 

勿論、比較的早くに亡くなった方も、いるにはいるが

だいたいはここ十数年で、どんどんと亡くなられてしまい

もう、親世代の親戚の方の人数も少なくなってしまった。

 

 

まあ、それはさて置き、俺が気になるのは

ご不幸があった際に、ウチに連絡を頂ける親類の方々ではなく

仕事で一緒に働いたことのある人達の方だ。

 

俺は結構、転職歴があり、同業・異業種を含めて10回以上の

転職をしているから、人よりも気になるのかもしれない。

 

俺が働き始めた頃に、在職していた当時の年配の上司や先輩は

上だと40歳近く年上の方もいたので、既に90歳を超えている

方もいるはずだ。

 

そこまではいかなくても、今現在、70代後半~80代になっている

だろう方が沢山いる。

 

辞めた会社でも、暫くは約束して吞みに行ったり

そこまででなくても、年賀状をやり取りしていた人達は

けっこういたのだが、今とは違いメールやLINEとかの気安さは

無い時代なので、いつの間にか縁遠くなり、音信不通となった。

 

余程の事があるか、付き合いのある共通の知人でもいない限りは

その方々の健康状態や、「ご不幸」を知る事は無いので

 

「あぁ、あの人は今も、お元気にしているのだろうか?」

・・・と、時々懐かしんで、気になる・・・と言う訳だ。

 

当時、よく呑みに連れて行ってくれた部長は

当時から、糖尿の具合がもう一つだったから

もしかして、もう・・・とか

 

いつもブチ切れて、デコに血管を浮かしながら

部下を怒鳴りつけていた課長は

きっと、長生きしてないだろうな・・・とか

 

社長の愛人だとの噂のあった、あのお局の

独身のオバさんは、今も寂しい独り身の独居老人

なのだろうか・・・とか(なんか悪意があるな・・・)

 

いつも机の上に飾ってある、可愛い一人娘の写真を

見ながら娘自慢をしていた店長は、今は孫に囲まれて

ノンビリしているのだろうか・・・とか

 

救いようのない飲んだくれで、月に一回は吞み過ぎて

道端で眠りこけていた先輩は

たぶん、ロクな人生を歩んでないだろうなぁ・・・とか

 


15年程前の事だが、急に警察から家に電話がかかってきた。

 

話の内容は、その5年程前(つまり今から20年前に)に勤めていた

小さな会社の社長の事についてだった。

 

その会社は、当時俺が勤務している間に閉める事になった。

 

社長の奔放経営の果てに、雪だるま式に借金がかさみ

返済しきれなくなった為だ。

 

俺は当時、その会社の書類管理全般を任されていた為

社長の家族以外では、最後の最後まで残って残務処理をした。

 

結局、最後の給与は払われず、俺が退職した次の日から

会社の事務所は閉められ、社長は行方が判らなくなった。

 

俺が、そんな事も既に忘れ去り、他の職場で普通に働いていた

ある日の夜に突然、家の電話に警察から連絡があったのだ。

 

警察の話では、大阪湾で水死体が上がり

その遺体が、持ち物からどうもその社長ではないかと言う事で

俺に「遺体確認」をして欲しいとの依頼だった。

 

俺は、その依頼を断った。

 

その会社には2年程しか務めていなかったし、

社長には、5年前当時、嫁さんや成人の息子もいたし

他にも、けっこう知り合いが多かった。

 

何よりも、普通の遺体ならまだしも、水死体など見たら

俺は一生、それが目に焼き付いて消えず

トラウマになるであろう。

 

警察に聞きはしなかったが、そもそも何故、俺に連絡が

来たのかも謎だった。

俺は、そこ迄して遺体を確認しなければならない程に

彼には、恩も親しみも感じてはいなかった。

 

警察も、たぶん他にアテがあったのだろう。

あっさりと引き下がって、「わかりました。」と言って電話は切れ

その後、2度と電話は無かった。

 

それから暫くは気にして、ニュース等を見ていたが

その件に関するニュースは流れなかったので

事件性は無かったか、もしかしたら、遺体がその社長だというのも

間違いだったのかもしれない。

 

だが、今でも時々・・・。

「あれは確認してあげた方が、良かったのかなぁ・・・。」

と、思い返したりもする。

 

まあでも、多分、同じ電話がかかって来ても、結局は断ると思うが。