おんまはみんなパッパカ走る

思い起こしばなし

甲子園のある街

俺は以前、甲子園の近くに住んでいた。

 

「甲子園」とは言わずと知れた、あの高校野球

阪神タイガースのホームで有名な、あの甲子園球場だ。

 

甲子園の近所に住んでいたと言うと、阪神ファン

ヨダレを垂らして、羨ましがりそうだが

ちなみに、俺は阪神タイガースのファンではない。

 

と言うか、そもそも最近は、

プロ野球を見る事自体が、殆ど無くなった。

 

時代なのか子供の頃は、それなりに野球は好きだった。

(俺の子供時代は野球の話が出来ないと、それだけで

友達との会話が成り立たない。)

 

ただし、少年時代を名古屋で過ごしたので

子供の頃は、中日ドラゴンズのファンだった。

 

しかし、中学2年の時に大阪に引越して、周りがほぼ

阪神ファンになり、テレビでは対阪神戦以外では中日戦は

見られず(ラジオもしかり)、テレビの阪神戦は阪神

偏った解説ばかり。(ラジオはもっとヒドい。。。)

 

30代になる頃には、プロ野球自体への興味が消えうせた。

 

そんな俺にとって、甲子園と言う所は

なかなかメンド臭い街だった。

 


まず、春と夏の高校野球全国大会の時期

街は急に観光地となってしまう。

 

街中やお店には色々な方言が飛び交い、道路は混雑

やけに観光バスやタクシーが多くなり、甲子園周囲には

土産屋さんが出現し、スーパー等にすらお土産が並ぶ。

 

コンビニの前や、ただのジーンズショップの前にでも

急に出店(でみせ)が出来て、何やら色々と売り始める。

 

仕事帰りにスーパーに寄ると、日常に購入する食材等の

売場が減り、お土産や野球観戦の為の、お弁当、お惣菜、

おつまみ、ビールやジュース等の飲料、お菓子類等で

埋め尽くされる。

 

そしてそれは、プロ野球のシーズン時も同様だ。

 

但し、お土産類は、阪神タイガースグッズに取って変わるし

やって来る人は、殆ど関西圏の人とはなるが。

 

高校野球プロ野球の違いは、人の密集度と時間の集中度。

 

プロは1試合しかないので、比較的短い時間だが

その分、人が一気に集中する。

 

高校野球の時は、地元同士の対戦とか強豪校同士の対決とかの

時以外は、ゆったりと人が増える感じだが

タイガースが好調時の、夏のナイターの夕方は、道路が混んで

車は動かず、スーパーも駐車場になかなか入れず、入ったら

入ったでレジは長蛇の列、もう買物にさえ行きたくない状況だ。

 

最悪な事に、甲子園球場には直営駐車場がない。

 

阪神タイガースの親会社は「阪神電鉄」で、甲子園球場

阪神電鉄」持ち物なので、球場には電車を利用して来て貰い

チケットや放映権以外に、お客の「運賃」でも儲けるシステム。

 

それでも、甲子園に車で来る人達は結構いる。

球場専用の駐車場は無いが、民間の駐車場はあるからだ。

 

野球開催時には、その民間の時間貸し駐車場がバカ高い。

 

タイムズとかの時間貸しは、ふだん1時間300円とか

500円とかなのに、その時は6~10倍くらいになる。

 

おかげで近隣の人も、停める事が出来なくなる。

住人はこの料金では余程じゃないと、多分停めないが

もし例え停めたくても、野球観戦の人は高額でも駐車するので

どこも空いていないのだ。

 

だから、野球開催時に高額で車を停めさせる為に

地元の、小さな土地を持っている人は、土地を売らないし

貸さないし、何も建てない。

 

野球シーズンが始まると、金額を書いたプラカードを

手に持って、その空地の前にひたすら立っている。

駐車料は、高校野球の時で1台あたり2~3千円、

プロ野球の時は3~5千円くらいが相場だ。

 

中には、自宅の駐車場の車をわざわざ遠方に停めに行き

そして空いた自分の駐車場に、野球観戦の客の車を

停めさせる地元民もいるくらいだ。

 

近隣のスーパーの駐車場は、一応野球観戦者の駐車を禁止

していて、一定の時間を超えるとかなり高額な駐車料を

取られるようなシステムにしている所が多い。

 

しかし、その高額な駐車料は、前出の民間の

野球開催時駐車料と、さほど変わりが無いので

結構、停めている人が多いのが現状だ。

 

実際に、野球開催時にはスーパーの駐車場は普段よりも

格段に混んでいて、停めにくくなったり、入りにくくなったり

結局は地元の住民がワリを食っている。

 

次に、電車の方の話なのだが、やはりタイガース戦のある日の

通勤(おもに帰宅時)が、特に大変だ。

 

俺は阪神甲子園駅から大阪に、通勤していた。

 

ナイターがある日は、いつも座れる電車でも座れないのが当たり前。

しかし最悪なのはデーゲームがある日で、タイミングが悪いと

試合終了で帰って来る観客の集団と、かち合う事がある。

 

反対方向だから良いのでは?

・・・と思うかもしれないが、タイガースが試合に勝ったりすると

観客の集団は、甲子園の駅で超満員になりながら

全員で車内で「六甲おろし」を合唱しながら降りて来るのだ。

 

電車には、阪神ファンじゃない人も、野球観戦以外の一般の

人もいるだろうに・・・。

 

たった今、阪神ファン達が降りて来た。その電車に乗る為

俺は大声で歌う人混みの逆流をかき分けて、車内に乗り込む。

 

電車は大阪(梅田駅と言う)が終点なので、その電車がまた

折り返して甲子園方向へ出発するのだ。

 

電車の車内は、先ほどまで満杯になっていた観客達の熱気で

ムンムンしていて、言いたくは無いが、とても汗臭い。

 

観客達は、つい今しがた迄、屋根の無い炎天下の甲子園球場

興奮しまくっていたのだから、当然と言えば当然だ。

 

俺が座席に座ると、心なしかシートが先ほどの観客の汗で

ジットリと湿っていて、気持ちが悪い。

 

あとナイターの時などは、甲子園駅に着いた際に、まだ試合の

真っ最中だったりするが、それが7回の裏頃だったらサイアクだ。

 

「7回の裏の攻撃です・・・・」の放送が聞こえると、音楽が

なり、それが終わると一斉にジェット風船が空に舞いあがる。

 

舞いあがった風船は当然のごとく、その後に落下する。

 

甲子園球場には屋根がない。

だから、休場の外にもワサワサ・・・と風船が降って来る。

 

今時だと、風船を膨らますポンプもあるのだと思うが

当時は口で膨らますのが主流。

 

唾液でベチャベチャの、しぼんだ風船が降って来るのだ。

 

よくよく見ると、しぼんだ風船だけでなく、飛んでいる風船も

膨らまし口から、唾液らしき水滴をまき散らしている。

 

他にも高く上がり切れず、志半ばで空気が抜けきらないまま

車道に落ちて来る風船が、アチコチで車に引かれて

パンパンと音を立てて破裂する。

 

その後には、しぼんだり破裂したりしたゴム風船の残骸が

あちらこちらに・・・。

 

あれって、阪神電鉄が人を雇って掃除させるのだろうか?

 


ナイターの次の日の朝。

出勤で、7時半頃に甲子園の前を通ると

上空には、あちらこちらにカラスがウジャウジャ、カアカア・・・。

 

ナイター終了が遅くなり、夜間に掃除が出来ず

たぶん球場内は、観客の食べ残しとかのゴミが散乱。

 

それを狙って、カラスがやって来るのだろう。

 

電光掲示板の上にまで、カラスがウジャウジャ、カアカア・・・。

 

集まり過ぎたカラス達は、収集前のゴミ袋までも

防護ネットをたぐり開けて、アチコチで荒らしまくる。

 


・・・とまあ、俺の知る甲子園の街はこんな感じだった。

 

十数年前の話なので、今の事は知らんし

きっと、もっと対策が進んで、改善されているとは思うけど。

 

少なくとも、コロナでジェット風船はやめてたよね。