おんまはみんなパッパカ走る

思い起こしばなし

俺は転校生

子供の頃、親の都合で良く学校を変わった。

旅役者ほどでは無いが、転校が多かった。

 

転校で困るのは、自分のキャラと言うか

立ち位置が変わる事だった。

 

小学校1年生の時は、皆が同じ条件の者同志だから

普通にワイワイ言って、徐々に幅を利かせて

クラスを代表する程のヤンチャ坊主だったのが

2年生になって転校すると、世界はガラッと変わり

周りは、皆が同じクラスの1年生からの繰り上がりで

仲良し同志ばかりで、自分だけが知らない子。

あまりに心細くて、急に泣き虫な少年に。。。

 

勉強でも困った事がある。

転校前の学校では、中学1年の社会科では

1年で歴史、2年で地理を習うプログラムだった。

俺は1年間歴史を勉強し、2年で転校した。

転校した先の学校は、なんと1年で地理

2年で歴史のプログラムの学校だったのだ。

 

結局、俺は2年間、歴史を勉強するハメになり

2年目の歴史の成績は爆上がり。

その代わり、逆に地理は一切、勉強しなかったので

全く分からず、高校受験の時にエラく苦労した。

 

こんな事もあった。

小学校3年生の時に転校したのだが

転校前に、校内でツベルクリンの検査があった。

要は子供の時に大嫌いだった注射(集団接種)だ。

 

ちなみにツベルクリン検査とは、結核菌の抗体検査で

薬剤を腕に注射して、腫れ(1センチ以上だったかな?)

が出たら陽性、出なかったら陰性で

陰性なら結核の抗体が無いので、結核のワクチンを

改めて接種するという感じの、検査用の注射だ。

 

転校前の検査で、俺は無事に陽性となり

その後、数週間後に転校する事になった。

するとまた転校先でも、ツベルクリン検査をすると言う。

注射嫌いの俺は、担任にすぐさま訴えた。

「前の学校で、数週間前に既に検査して陽性でした。」

俺の担任は、あまり興味なさそうに、

しかも面倒くさそうに言い放った!

「ふーん、、まあ、別にもう一回打っても良いんじゃない。

前に右腕にしたんだったら、今度は左腕に打てば?」

・・・・・訳わからん!!!

 

無残にも、俺はもう一度ツベルクリン検査の

注射を打たれた。

勿論、陽性だった。

今なら、担任を訴えてやるところだ!!!

 

 

もう一つ、忘れられない事がある。

 

小学校3年生の時に、春から3ヶ月だけ通った学校があった。

3ヶ月しか通わなかったので、自分の中では

引越して来て、新しいクラスの転校生になって

(実際、転校生と呼ばれていた。)

まだ転校生の認識のまま、また引っ越して行ったという感じだ。

 

その後、中学校2年生になってから、又その同じ場所に戻って来た。

通う学校は、小学校から中学校に変わってしまったが

学校の校区は、全く同じだ。

(引越し先は同じ家だったからね。)

 

自分としては、当時のクラスメイトに憶えられていても

逆に忘れられていても、こっ恥ずかしいし

何だか格好悪い気がして、以前にここの小学校に

3ヶ月だけ通って事は、知らないフリをして

もし気が付いた人がいても、トボけていようと思っていた。

 

知っている人は良く知っているだろうが

この頃、時代は校内暴力の嵐の真っ只中だ。

テレビでは、金八先生の初期の頃。

尾崎豊も、俺とまったくの同世代だ。

 

実際に、新たに俺の行く事になった中学校は

テレビのニュースに負けないくらいの中々の荒れ模様だった。

(実際にニュースになった事もある。)

校舎の窓は割れ、トイレ前では生徒がタバコを吸い

男子生徒の3分の1は、リーゼントかパンチパーマ。

女子は茶髪で、クルクルパーマか、無造作に長髪。

(オーバーじゃなく本当の話)

生活指導とか、校則とか、あるの?この学校。。。

 

で、転校して初日の昼休み。

俺が緊張して、自分の席に座っていると

ドヤドヤと、短ランとか長ランを来た

リーゼントに剃り込みの入ったヤツらが入って来た。

俺が転校前にお世話になった、ド田舎の中学校では

一人も見かけなかったタイプのいでたちの連中だ。

 

どうやら、さっそく転校生を値踏みに来たらしい。

それまで田舎の平和な世界で生きて来た俺は

イカつい連中に取り囲まれて生きた心地もしなかった。

何を聞かれるのか?

一回シバかれて、こちらの反応を見るのか?

どこかに、連れていかれるのか?

 

その時、

「あれっ?お前、もしかして○○と違うん??」

というヤツがいた。

すると別のヤツが

「せやせや、小学校の時の転校生の○○やろ!」

 

改めて見ると、なんとなく憶えてる顔が二つある。

なんと、囲んで来た学ラン連中の内の二人が

小学校3年の時の、クラスメイトだった。

3年の頃から、目立ってヤンチャだった子らなので

俺もアッサリと思い出した。

こうなると、もうトボける事は出来ない。

 

せやねん、また戻って来てん。」

「そーか、そーか、他のヤツにも言うとくわ。」

「今忙しいから、また今度話そな。」

 

そして、周りの連中に
「あー、コイツ、大丈夫なヤツや!」
と言って、また皆でドヤドヤと去って行った。

 

何が「大丈夫なヤツ」なのか、こっちは良く判らんけど。

まあ、無事で助かった。

2~3発、いかれるんかと思ったし。

 

とういう訳で

転校生はけっこう苦労する・・・という話。