おんまはみんなパッパカ走る

思い起こしばなし

無邪気でサイコな昆虫採集

小学校まで一人っ子だった。

母子家庭だったので、鍵っ子でもあった。

どちらも今の時代だと当たり前だけど

当時はそんなに多くなかった。たぶん。

 

ビデオゲームの無い時代、一人で遊ぶ方法は少なかった。

その中の一つが昆虫採集。

夏は、昆虫採集に明け暮れた。

現代とは違い、郊外でも死ぬほど虫が捕れた。

セミ、トンボ、チョウチョなどは

虫捕り網など無くても、結構捕れた。

虫捕り網があったら、虫かごが真っ黒になる程、捕れた。

捕獲が目的で、育てたり愛でるのが目的じゃないので

真っ黒になるまで捕れた虫かごは、家に帰るとほったらかし。

セミばかり入ったカゴなどは、翌日にはただ生ゴミの入った

カゴと化し、母がブチ切れてよく怒られた。

 

捕った虫を、ほったらかしにしない時もあった。

駄菓子屋とかに「昆虫採集セット」なる箱モノが売っていて

年に一回くらいは買っていた。

箱の内容は金額によるが、液体の殺虫剤と防腐剤と

それを虫に打つ為の注射器。

あと、ピンセット、虫眼鏡、虫ピン。

つまり昆虫標本を作製する為のセットだったらしい。

なぜ「らしい」と言うのかと言えば、

正確な使用法と内容を知ったのは、中学生くらいになってからで

小学生当時は、全く知らなかった。

説明書か箱の裏書にでも書いてあったかもしれないが

読んだことは一度もない。

子供の頭の中と言うのは単純なもので、注射器が付いていたので

虫を使って「お医者さんごっこ」をする玩具だと思っていた。

(俺だけ?)

付属の液体も、麻酔とか薬(良い意味での)だと思っていた。

自分をお医者さんとして、患者に見立てた虫に「治療」と

称して「殺虫剤」を注射するのだから、虫の方からしたら

たまったモノではない。

 

「採集セット」のメーカーさんも、お医者さんごっこ

ニーズを感じていてか、ある年に購入した「セット」には

医者が使うメスのようなものが付いていた。

もちろん安全を考慮して、形だけで刃は付いていなかった。

それを使って、カエルの解剖をしようとした事がある。

つまり、お医者さんが手術をする「ごっこ」だ。

捕まえてきたカエルを、発泡スチロールの板の上に

仰向けにして、四肢を虫ピンで留めた。

「じゃあ、麻酔を打ちますね~」・・・と

殺虫剤だか、防腐剤だか判らない液体を注射器で注入。

既に瀕死のカエルのお腹に、刃の付いていないメスを

押し付けた。

当然切れないので、カエルのお腹は押した分潰れるだけ。

全然切れないのでムキになって、お腹を無理やり引き裂く。

後に残ったのは無残にグチャグチャになったカエルだけ。

上手くいかないものだと、カエルを捨てる為に外に出ると

手術前はカンカン照りだったのに、土砂降りの雨になっていた。

ふと「カエルの祟りかな?」と思った。

 

可愛い我が子が、こんな遊びをしていたなんて

当時、俺の親は一切、知りませんでした。

子供って、怖いね。